家族信託は平成18年の信託法改正によって本格的な使用ができるようになった比較的新しい精度です。信託はそもそも信託銀行などによる商事信託を中心に発展してきました。しかし、近年財産管理や遺産承継といった分野への信託の利用のニーズが高まり、それを受けて政府も信託法の改正を検討し始め、平成18年に信託法改正要綱に基づく信託法案及び整備法案が成立したのです。
財産管理や遺産承継への利用のニーズから信託法が改正されたように、その分野において家族信託は非常に有効なツールとなります。
■財産管理と家族信託
財産の所有者が認知症などによって制限行為能力者となった場合、その財産を管理する人物が必要になります。こうした場合これまでは成年後見制度などの利用によって財産管理を行ってきました。しかし、成年後見制度はあくまでも元の財産の保全を目的とした制度であったため、不動産の処分や資産運用は難しい状況にあり、少しでも難しい判断を行う場合は家庭裁判所の判断を仰ぐ必要があります。
一方で家族信託では契約に明記さえしていれば、財産管理者である受託者によって不動産の処分といった難しい判断を行うことができます。このように家族信託では柔軟な財産管理を行うことができます。
■遺産承継と家族信託
遺産承継の場合に財産分割でよく利用されるのが遺言です。遺言では財産の相続を、法で定められた形式で記すことによって、法定相続分以外はある程度自由に定めることができます。
しかし、自由とは言え一度財産を次の人物に承継してしまえば、承継した人物の、更に次に承継する人物までを定めることはできません。これは二次相続と呼ばれています。つまり、これまでは自分のある財産を息子に承継し、その次は孫に承継させたいと思ったとしても確実に実行する方法がなかったのです。
しかし家族信託では受益者連続型信託という方法でこれが可能になりました。これは信託法91条を根拠としたもので、家族信託契約を行う際に自分の死後、何代も先の受益者を指定しておくことで可能になります。これによって、遺産承継の意志をより確実に実現することが可能になりました。
家族信託
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